G線上のアリア


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 ↓まずは先に音楽スタートしましょう

※全曲5:59。

 G線上のアリア という名前で知られているこの曲は、リラックス音楽、ヒーリング音楽、環境音楽、BGM、クラシック名曲集など色々なところで触れることができ、いつの間にか耳にしている人がほとんどでしょう。バロック音楽だと知らないでいる人も多いかもしれません。『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』でもアスカとエヴァシリーズとの戦闘シーンで流れていましたのでそれで知ったという方もいらっしゃるかもしれません。あ〜この映画も1997年ですから、もう20年も前なのですね〜。月日の経つのは早いものです。

 作曲者は、バロック時代後期の大作曲家、ヨハン・セバスチャン・バッハです。多くの人が、音楽室に掲げてある、カツラを被ってしかめ面をしている肖像画を思い起こすことでしょう。バッハ、ヘンデル、そしてへんな髪型のベートーベンは音楽室の定番ですね。
 そんなビジュアルからは想像もつかない、とてもやわらかで、豊かな響きで、優しく包んでくれる音楽です。
 正式名称は、管弦楽組曲第3番ニ長調BWV1068の第2曲、「アリア」です。「アリア」は、「ガボット」や「メヌエット」などと同じで、曲の種類の呼び名なので、「アリア」だけではどの曲だか分からず、かといって一々管弦楽組曲第……というのも面倒なので、「G線上のアリア」という通称は便利なのでみんな使っているというわけです。
 なんでそんな通称になったかというと、1800年代後半に活躍したバイオリニスト、アウグスト・ヴィルヘルミ(August Wilhelmj)という人が、バイオリンとピアノのために編曲し、ついでにハ長調に移調してバイオリンの最低音を出すG線だけで演奏できるようにした、ということで、「G線上のアリア」と言われるようになったということです。バイオリンの出だしが原曲より1オクターブ低いところから始まるのが特徴です。まあどうでもいいですね。ただ、「G線上のアリア」として演奏会で演奏されたり、CDに録音されている演奏はほとんどがオーケストラ版、つまりバッハの原曲の方を演奏していて、本来のG線上のアリア、つまりバイオリン独奏とピアノのための編曲版は意識して探さないと聞く機会はないと思います。

 管弦楽組曲というのは、オーケストラで演奏する組曲、つまり、オーケストラで何曲か演奏する音楽です。組曲というのは、幾つかの曲をひとセットにまとめたもので、有名なものでは、組曲「展覧会の絵」という音楽をご存知の方は多いと思います。料理で言えば懐石料理。料理が一つずつ出てきて、全部でひとセットになるわけです。
 このG線上のアリアの含まれる管弦楽組曲第3番の楽譜を見ると、オーボエT・U、トランペットT・U・V、ティンパニ、弦楽合奏部(バイオリンT・U、ヴィオラ、通奏低音)と合計10段の楽譜になっていて、現代の交響曲に比べると小規模ですが、当時としては大分頑張った規模です。組曲の1曲目はこれらの楽器が全部使われて壮大な元気のいい曲を演奏します。

 そして2曲目がこのアリア。

 とても豊かな響きですが、なんと楽譜はたったの4段。同時に鳴っている音の種類は最大でもわずか4つなのです。それでこの豊かでしかも複雑な陰影を持った響きが生み出されるのです。凄いですね〜。最小規模だと、各パート一人、通奏低音は弦と和音を奏でられる楽器で演奏するのが普通なので、通常は5人は必要で、そういう最小人数での演奏も可能です。実際、弦楽四重奏団が演奏している場合もあります。この場合はたったの4人での演奏ですが、やはりこの豊かで複雑な陰影を持った豊饒な音楽が生み出されるわけです。すごいですね〜。(通奏低音のパートというのは、単旋律の低音を奏でられる楽器、プラス、チェンバロやオルガンもしくはリュートなど和声を奏でることのできる楽器の合計2人で演奏されるのが基本ですが、曲の構成によっては鍵盤楽器が省かれたり、ベースラインをコントラバスに相当する楽器で補強することも多いようです。)

 豊かで複雑な陰影を持った豊饒な響きの秘密は、バッハの作曲技法「和声的対位法」にあります。後半、内声のバイオリンやビオラが旋律的に動いていますよね。その結果、経過音などの不協和音が一時的に生じ、後世に多用されるようなテンションコードになっちゃうんですね。「バッハは後世使用されるすべての和音を当時において既に使用していた。バッハが使ったことがない和音は無い」と言われたりするその片鱗がちょびっとだけですが、この曲にも出ているわけです。バッハは非常に研究熱心で、「へんな音を混ぜて観衆を戸惑わせた」と雇い主から怒られたという話もあるようです。まあ教会の音楽監督だった時代でしょうから、当時の敬虔な市民には、なじめない響きも含まれていたのかもしれませんね。

 あ、音楽終わっちゃったですか?
 では、そのコードを分析した画像を次の動画でご覧下さい。(この分析では、16分音符による経過音・倚音・刺繍音・稽留音などによる偶発的な和声は無視されています。そこを和声と考えずに経過音等の偶発だと無視するのが分析ですね(^^;;;) 興味のない方は、その動画は飛ばして3つ目の動画へどうぞ。コードをじっくり見たい方は、動画右下の「全画面表示」機能をお使いください。解除はエスケープキーです(通常キーボードの左端上にあります Esc と表示されています)。
 音楽終わってない方はここでじっくりと最後まで味わいましょう(^o^)ノ

※4:01

 さて、この音楽、素晴らしい理由は、実はこの曲は天上の音楽ではないか、バッハの魂が天上に飛んで聞いてきたのではないか、というウワサを立てようと思います。次の動画でお聴きください。


※3:44

 少年合唱団による演奏で、かなり狙っているところが見えちゃうとちょっと臭いですが、あまり気付かないことにして、音に浸れば、なるほどこれは天上の音楽だったんだ、それを地上の楽器で演奏できるように書き留めたんだなぁという気がしてきます。しますよね?(←強要)

 まだ時間がある方は他の動画もどうぞお選びください。

 なお、最初の動画は、できるだけ「イージー・リスニング」に向いている演奏を選んでいます。

楽譜を見たい方はこれ↓とか。大きく見たい方はこれも動画画面右下の「全画面表示」機能をお使いください。解除はEscキーです。 あとバッハの曲の動画スクロールでは GERUBACHチャンネル (←リンクになってます)が定番です。

※5:15

↓古楽演奏だがゆっくりしたテンポがいい方はこれとかは如何でしょうか

※5:19
 楽器編成は、バロックバイオリンTが2人、バロックバイオリンUが2人、バロックビオラが1人、5弦のバロックチェロが1人、ビオローネ(数字付き通奏低音の低音補強用)が1人、アーチリュートとオルガン(ポジティブオルガンかな?)(数字付き通奏低音の和声(数字で指定分)担当)が各1人。オルガンの人が弾き振りというか、特に指揮者を定めずに自然に合奏している感じですね。

さて、まだお時間がある方は、こんなものも有りますのでどうぞ。
↓ジャズ版の「G線上のアリア」です。もちろん、定番のジャック・ルーシェ・トリオです。

※3:45
↑この曲は、元々ジャズの曲で、ジャズのスタンダードナンバーなんですよ、と言われたら信じそうなくらいの、素晴らしいジャズアレンジですね。


ほかにも多数の色々な演奏が聴けますね。有り難いことです。

いや〜音楽って本当にいいもんですね〜(←水野晴郎の口調で)

 G線上のアリア、堪能して戴けたのであれば幸いです。


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