ヴィヴァルディの「春」


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 ↓まずは先に音楽をスタートしましょう

※全曲9:56。第1楽章 0:00〜、第2楽章 3:28〜、第3楽章 5:56〜

 バロック音楽と言えば、ヴィヴァルディの四季、ヴィヴァルディの四季と言えば「春」というわけで、極めて知名度の高い曲ですね。
 春ってどんな曲だっけ? と思う方も、聞いてみれば、あ、この曲この曲と思うこと請け合いです。
 この曲の正式名称は、アントニオ・ルーチョ・ヴィヴァルディ(Antonio Lucio Vivaldi)作曲の協奏曲集「和声と創意への試み」作品8の第1曲、協奏曲第1番ホ長調RV.269、「春」です。
 当時は、6曲もしくは12曲を1セットとして曲集として出版する習慣があり、この協奏曲集も12曲が入っています。1曲1曲がすべて3楽章からなっていて、「春」にも3楽章あります。有名なのは出だしの第1楽章ですね。
 ビバルディ自身は「四季」や「春」といった名称を与えていないと言われています。その代わりに各楽章に「ソネット」(ルネッサンス時代に始まったヨーロッパの定型詩の形式の一つ。日本語訳は14行詩)がつけられています。
 「春」の第1楽章につけられているソネットは、

春がやってきた、小鳥は喜び囀りながら祝っている。小川のせせらぎ、風が優しく撫でる。春を告げる雷が轟音を立て黒い雲が空を覆う、そして嵐は去り小鳥は素晴らしい声で歌う。鳥の声をソロヴァイオリンが高らかにそして華やかにうたいあげる。


 第2楽章につけられているソネットは

牧草地に花は咲き乱れ、空に伸びた枝の茂った葉はガサガサ音を立てる。羊飼は眠り、忠実な猟犬は(私の)そばにいる。弦楽器の静かな旋律にソロヴァイオリンがのどかなメロディを奏でる。ヴィオラの低いCis音が吠える犬を表現している。


 第3楽章につけられているソネットは

陽気なバグパイプにニンフと羊飼いが明るい春の空の下で踊る。


となっています。(翻訳はwikipedia日本語版掲載のものを使用)。いや3楽章、短かすぎないか?全部合わせて14行なんでしょうかね?
 第1楽章は、春の雰囲気を伝える主題のほかに、バイオリン3台の掛け合いで表現される鳥のさえずり、弦で演奏される小川のせせらぎ、そして、暗雲と雷鳴など、標題音楽としての特徴を備えています。(楽譜内にヴィヴァルディ自身によるそういう註が入っているのだと思っていましたが、裏が取れませんでした)。
 さて、これで思い出すのは、ベートーベン作曲の交響曲第6番ヘ長調「田園」ですね。各楽章にこんな標題が付いています。
 第1楽章「田舎に到着したときの愉快な感情の目覚め」
 第2楽章「小川のほとりの情景」
 第3楽章「田舎の人々の楽しい集い」
 第4楽章「雷雨、嵐」
 第5楽章「牧歌 嵐の後の喜ばしい感謝の気持ち」
 何だか表現しようとしているものが似通っていますね。ヴィヴァルディは「春」という季節を、ベートーベンは「田園」という場所を表現しようとしていますが、結局表現されているのは、「田園の春」という同じ物かもしれないなぁなんて思います。

 さて、ヴィヴァルディは、作品3の「調和の霊感」ですでに、透明度が高く甘い響きの「和声」を使用した曲を発表し、一世を風靡しました。透明で甘やかなイタリアの協奏曲の響きはあっというまにヨーロッパ中の人々を魅了していきます。ドイツでも「イタリアの協奏曲」はもてはやされ、ドイツの作曲家であるバッハも、ヴィヴァルディや他のイタリアの作曲家の楽譜を手に入れて研究しているくらいです。
 しかしバロック音楽の終末期、バッハでさえすでに過去の作曲家とされるほど時代の音楽の好みは急激に大きく変わり、このヴィヴァルディもどういう経緯か分かりませんがウィーンにて客死したとのことです。バッハ1685-1750、ヴィヴァルディ1678-1741、ほぼ同時代、バロック音楽の最盛期であるバロック後期を飾る大作曲家でした。しかし、バッハの音楽と同様にヴィヴァルディの音楽もいったん綺麗さっぱり忘れ去られてしまうのでした。諸行無常でございます。

 さて、最初に選んだ動画は、古楽器による演奏が定番となった頃の古楽器による演奏です。日本でバロックブームが始まった時、この「四季」が大流行し、イ・ムジチ合奏団の演奏による「四季」の録音は280万枚以上の売り上げを記録したそうです。
 私と同年配の方は、このイ・ムジチ合奏団の演奏の方が馴染みやすいかもしれません……というか懐かしいかもしれません。
↓こちらからどうぞ

※11分31秒。第1楽章 0:00〜、第2楽章 3:45〜、第3楽章 6:45〜

 ヴィヴァルディはほかにも多数の名曲を残しており、四季ほどではありませんが比較的有名なものがいくつかありますので、また機会があったらご紹介したいと思います。


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