水上の音楽


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↓まずは先に音楽スタートしましょう

00:01- 第1組曲、36:23- 第2組曲、 48:20- 第3組曲
(第1組曲、1.Alla hornpipe、2.Ouverture (Largo / Allegro) 、3.Adagio e staccato、4.Menuet、5.Andante、6.Menuet (reprise)、7.Passepied、8.Air、9.Menuet、10.Bourree、11.Hornpipe (Andante) 、12.Allegro
第2組曲、13.Menuet、14.Rigaudon I & II、15.Menuet I & II、16.Gigue I & II
第3組曲、17.Allegro、18.Alla hornpipe、19.Menuet、20.Lentement、21.Bourree)

 「水上の音楽」という名前で広く知られているこの曲は、ヘンデルの代表作で有り、ヘンデルらしい壮大な響き、明るく抜ける心地よい響きが爽快な名曲です。
 正式名称は、ジョージ・フリデリック・ハンデル(ドイツ名ではゲオルグ・フリードリヒ・ヘンデル)作曲、「水上の音楽」 第1組曲ヘ長調HWV348、第2組曲ニ長調 HWV249、第3組曲ト長調HWV350(新ヘンデル全集 レートリヒ校訂、通称ハレ版による)です。
 ここでは、以後、ハンデルではなくてドイツ読みのヘンデルと記述します。ヘンデルは、バッハと同じ年、1685年にドイツに生れた、イギリスのバロック音楽を代表する作曲家です。幼少期より非凡な音楽の才能を示していたといわれています。1710年にハノーファー選帝侯の宮廷楽長となっています。しかし、1712年にロンドンに移住し、ハノーファー選帝侯からの度重なる帰国命令を無視してイギリスに居座ってしまいます。1714年にイギリスのアン女王が亡くなり、後継ぎがいないため、イングランド王ジェームズT世の血をひいたハノーファー選帝侯ゲオルグ・ルートヴィヒがイギリス国王として迎えられることになっちゃいました。ヘンデルが帰国命令を無視した、あのハノーファー選帝侯です。ヤバいですね〜。しかも今度は国王ですから、ヘンデル? あいつ気にくわね〜死刑だ〜ってなったらシャレになりませんぜ、旦那。
 ってことで、窮地に陥ったヘンデルは、この水上の音楽を作曲・献呈することによりジョージT世と和解することを得た、という伝承があります。面白いですね〜 楽しいですね〜(^^;。 しかし、後世の研究家によると、作曲年代とジョージT世の戴冠の時期から、この伝承は史実ではない、ということになってます。(つまり作曲年代より、和解の方が先)。まあ真実は不明です。これからいい曲作って献呈しますからって仲直りしたかもしれませんしね。
 ヘンデルは、この後、結局1727年にイギリスに帰化して、ゲオルグ・フリードリヒ・ヘンデルから、ジョージ・フリデリック・ハンデルになったわけです。(Handelのaはaウムラウトなのですが、そのウムラウトが消えて単なるaになった)。当時イギリスでは大人気の売れっ子作曲家で、イギリスの後期バロックを代表する作曲家ということになっています。なぜか日本ではバッハと並ぶドイツの作曲家ということになっていますが……(;゚−゚)??
 バッハやヴィヴァルディの音楽がいったん綺麗さっぱり忘れられたのと同じように、ヘンデルのこの水上の音楽もいったん失われてしまいます。しかし、まだ失われていない時機に発行された断片的なパート譜や、ピアノへの編曲譜などが残されており、フリードリヒ・クリサンダー(1826〜1901)によって、管弦楽曲への復元が試みられました。ブライトコップ・ウント・ヘルテル(Breitkopf und Hartel)社(楽譜出版の会社です)が出したヘンデル全集(通称:旧ヘンデル全集)にはこのクリサンダーによる楽譜が収録され、「旧ヘンデル全集による水上の音楽(クリュサンダー版)」と呼ばれています。現在このクリュサンダー版はPublic Domain の楽譜として公表されていて、誰でも無料で入手できます。リンクはこちら。http://imslp.org/wiki/Water_Music,_HWV_348-350_(Handel,_George_Frideric)
 その後、いろいろな版が出たようですが、現在はベーレンライター社が出したヘンデル全集(通称:新ヘンデル全集)に収録されている、H.F.レートリッヒという人が校訂した版(通称ハレ版)がスタンダードということになっているようです。つまり現在のスタンダードは「新ヘンデル全集による水上の音楽(ハレ版)」と言われているということです。たまに新ヘンデル全集をハレ版ではなくてレートリッヒ版と記述されている場合がありますが同じ物です。
 このように、元々の楽譜が失われており、「本来こうあるべき」姿が不明ですので、実際に演奏される、曲数、順番には様々なバリエーションがあります。CDなどに納める際にはなおのこと、演奏時間の制限や、聞き映えなどを考慮した選曲、演奏順になっており、同じ曲名「水上の音楽」のCDでも、内容には結構バリエーションが見られます。ちょっと調べただけでも収拾が付かなくなるくらい様々でした。
 いずれにせよ、実際にこの曲が、ジョージT世の船遊びの際に演奏されたこと自体はほぼ確定で、1717年の舟遊びの往復の際に3回演奏されたという記録があるそうです。ただし、現存する組曲中のどの曲がどの順番でというのは不明です。
 組曲中の各曲はいずれも、ヘンデルらしい、抜けのよい明るい響きの音楽で、屋外の雰囲気をよく醸し出しています。
 ということで、すでに水上の音楽を知っている、と思っている方で、水上の音楽の演奏を聴いて、「あれ? これじゃない」感がある方もいらっしゃると思います。それは、慣れ親しんだ演奏とは違う版のものをお聴きになったということでしょう。
 念のため、古いタイプの演奏をご紹介しましょう。また、古楽器による演奏も次にご案内します。お暇なときにでも、色々なバージョンをお楽しみください。
 ↓古いタイプの演奏

※23:20
 ↑これは、このサイトではよくご紹介している、ストコフスキーによる演奏です。1961年の録音です。この時代には、古楽器を使った古楽演奏という概念がまだ無い時代ですから、ロマン派のクラシック音楽を演奏する要領で、華々しく情熱をこめた演奏になっています。8曲しか含まれていません。
 ↓古楽演奏で、演奏風景を楽しみたいという方にはこちらをどうぞ。

※54:12
 ↓やはり水上の音楽はイギリスの演奏家で……という方はこちらをどうぞ

※1:02:47
 いろいろな版による色々な演奏があります。組曲ですからたくさんの曲が含まれているのですが、この水上の音楽、含まれる曲の当たり外れが少なく、粒ぞろいとなっています。どの版をお聴きになっても、「ヘンデルの水上の音楽」を味わえると思います。

 水上の音楽、、堪能して戴けたのであれば幸いです。


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